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髪の毛から他人の匂い

彼の優しさにズブズブに甘えて、めろめろに甘やかされて、いままでひとりで立っていられたのが嘘みたい。
これからはまたひとりだ。もとに戻るだけなのに、どうしよう。新しい土地でひとりでなんて生きていけないよ〜自信がないよ〜ひとりにしないで.........

きっとわたしはずっと欲しかったものを手に入れて、よっぽど精神的に安定できたと思います。他人の影響力ってすごくて、かなり彼に救われている。彼の存在はおくすりよりもお酒よりもわたしを救ってくれます。


彼が身に着けている金属の冷たさを感じたとき現実を思い出して。だからこそ、わたしは安心して彼に身を預けられます。ちいさな金属は熱伝導性が良すぎてすぐに体温に馴染んでしまうけれど。何も背負わずに甘いところだけほしいだなんて、本当に卑怯で最低ですね。

最初は遊びでいいやと思っていたけれど、どんどん本気になっていった なんて言葉の全てを信じるわけじゃあないけれど、全部が嘘だとも思わないような...なんて甘いことばっかり考えていたい。嘘を追求したらキリのない関係だから、明るくて甘くて楽しい女の子で居続けたい。きっと彼はわたしにそういう軽さを求めているから。
わたしたちはお互いに責任がないので嫌なところは見なくて済みますね。だから甘い言葉だって沢山吐けるし、ずっと笑顔でいれる。


ひとりで居るときに ふと彼のコロンの香りを思い出したり、デートのあとに髪の毛についた彼の煙草の香りを感じてしまった途端に駄目になる。
でも、もうお風呂に入ったし、お洋服も着替えて洗濯するから染み付いた煙草の香りもコロンの香りも全部消えると思う。さよなら。

わたしが新しい生活を始めてもこのままの関係を続けていきたいね だなんて、わたしたちは一生しあわせになれないじゃん〜。わたしが断れないことを知っていて提案する彼は、本当にずるくて卑怯です。


新しい街へ移る前日、彼と最後のデートをしました。とっておきの車で迎えにきてくれて、海までドライブ。ちょっとした恋人気分を味わったら、移動してカフェで遅めのランチ。夜はわたしが大好きな海鮮を食べたあと手を繋いで歩いて、夜景の見えるバーでお酒を飲みました。
絶対に泣くもんか と思っていたのですが、別れたあとホテルの部屋に戻ったら彼から着信があって。「車に戻ったら寒い寒い」って言ってすぐに切れたのですが、そのあとに大泣き。彼も寂しいのかもしれない、と初めて実感しました。


翌朝は予定通り寝坊して、時間に追われつつ電車に飛び乗りました。見送りには来ないで欲しいと釘を刺しておいたし、彼は 昼まで起きない!と宣言していたので安心して旅立てました。
そこまでは何ひとつ寂しくなかったのに、海がみえてからはひたすら泣いていました。声を出さないように、伸ばした前髪で顔を隠しつつ。
大泣きして、泣き疲れたあとに新幹線でスジャータのバニラアイスを食べました。移動をするだけの死んだ休日、ひとりぼっちの車内で疲れ切ったわたしにアイスクリームの甘さと冷たさが優しくて、優しすぎて。なんだかまた泣いてしまいそうになったりして.........


新居に移ってからはとんでもない欝状態。お酒かおくすりを飲んで、泣くか寝るかしかできませんでした。
心配と迷惑をかけちゃうから自分からは連絡しないって決めていたのに、さっそく電話をかけちゃって。泣いていることがバレないようにって思ったらぜんぜん話せないし、言葉は出てこないしでさらに迷惑かけちゃった。でも優しかった。
わたしが居なくても彼の日常はいままで通り進んでいることに安心しました。わたしが居ても、居なくてもいい。わたしが心配しないように、そう振る舞ってくれている面もあるだろうけれど。

明日の夜電話するから、それまでに市役所と警察署と銀行に行って、必要なこと全部片付けてばっちりだよって報告してねって言ってくれて。荷ほどきや手続きの一切をせずに泣いて暮らしているわたしが、最低限のことを出来るように。


彼とわたしとの関係は間違っているのに、どうしてこんなに幸せなんだろう。

彼は 自分がもっと若ければ... と口にするけれど、わたしはこの年齢差とこの関係がちょうどいいと思います。だからわたしは安心して彼に身を預けられます。

彼はわたしの未来に嫉妬しているようですが、わたしが嫉妬するとすれば彼の過去でしょう。
何人の女の子の犠牲のうえに彼の優しさや余裕があるのかを考えます。彼にとって最新の女の子であるわたしは、いちばんの贅沢をさせてもらってる。だから、いちばん最初の男性が彼でよかったのかはまだわかりません。
でも、今 しあわせだからいいや。


彼は現状のわたしの全てを受け入れてくれて、「これからどんな大人の女性になるか楽しみ」と言ってくれます。
次に会ったときには、もっと素敵な女性になっちゃうんだからね。それが今のわたしの生きる糧で、だから自傷癖も過食症も不安障害も醜形恐怖症も躁鬱も治したいんだよ〜

耳のかたちが嫌いで、自分が嫌いで、運命を変えたくて、依存的に開けまくった16個のピアスの全てを塞いで普通の素敵な女の子に戻ります。
代わりにちょっと背伸びした素敵なアクセサリィを買うんだよ。もちろん、セルジュの幸せの手錠。

素晴らしい時と幸せが私達を待っているでしょう