4月日記2017

久しぶりにアパートに帰ってきました。

 

今月はずーっとホテル生活をしていて。食べものもコミュニケーションもオレンジ色の蛍光灯も、浴びすぎた。与えられ過ぎた。とっくに飽和して、疲労しきっていました。

 

 

越してきたときは嫌いだったこの町に、久しぶりに帰ってきて。帰る家があるだけなのにもう わたしの町、落ち着く町で。

この町はなーんにも無いのに、不便なのに、ゆったりしていて優しくて。電車を降りて懐かしく思ったりしちゃって。

 

車が無ければ生活するには不便だけれど、なんとなくこの町はよそ者のわたしを受け入れてくれるような気がします。生まれ育った町にも似ているような気がして、よそ者のわたしだけれど この町をすぐに好きになってしまいそう。ここでなら生きていかれそう。生活していかれそう。

 

 

都会はさまざまなものが溢れていて 空想の余地がなくて、紛れるにはもってこいだけれどちゃんと生活を送る自信がないなぁとつくづく思わされます。

あんなにも他人との距離が近いなんて、あんなにも部屋が狭いなんて。都会は合理的な形をしています。わかりやすくて、デッドスペースを殺してとにかく詰め込んで。無駄なものは排他されてしまう気がして、ゆっくりしてたら追い出されそうで、いつだって落ち着かないんです。

 

わたしは江國香織さんの小説の女の子に憧れているので、ほんとうは東京で、もっと言えば小田急線沿いのアパートで猫のフキと暮らしたい。でも、無理だと思う。実現するのは容易いけれど、きっとすぐ会社を辞めてしまうと思うし、毎日鬱々と、泣きながら暮らしてしまいそう。なんとなく、生活が立ち行かなくなる気がするんです。

 

 

いま住んでいるこの町はド田舎で、でも、海も山も川もある。景観は生まれ育った町よりも田舎ですが、交通機関がソコソコ発達しているのでソコソコ便利。

なにより、住んでいるアパートが最高。ひとりで住むには広過ぎて、部屋数も充実しすぎていて、持て余していて、「お城」って呼んでる。セキュリティばっちりなのに、家賃がめちゃくちゃ安い。

 

こんなに恵まれているのはおかしい。あまりにも出来すぎていて…。会社側が様々なテストや診断の結果をふまえて、わたしが都会では生活が立ち行かなくなることを予想して、ド田舎に配属してくれたような気さえするんです。

だってわたし、研修期間中に電車の遅延で会社に遅刻しそうになって不安障害爆発させてオロオロめそめそしていたんです。遅延するたびにこんなんじゃ通勤もままならない。ただでさえ通勤電車は他人との距離が近すぎてすっかり疲労してしまって…こんなわたしが都会で生きていかれるわけがありませんね。

 

 

田舎自慢をすると、わたしの生まれ育った山形は まず、水が美味しい。お米も美味しいし、野菜も肉も魚も美味しい。美味しいし、新鮮なものが安く手に入る。ずいぶんと豊かな食生活をしていました。

 

今月暮らしていたホテルは、自分のお金では泊まろうと思わないくらいの高級ホテルで。ベッドはふかふか、広くて大きいベッドに、広くて清潔なお風呂。広くて持て余しがちなお部屋に、豪華な夜景!

でも、食べものはぜーんぶ美味しくないんです。味付けはしょっぱいし、米はまずいし、魚も肉も良くなくて。

 

このホテルがある街で、あるいは都会で、わたしが山形で普段食べていた程度の食事をするには、どのくらいお金を積めばいいんだろう。

 

食べることは生きることで、豊かで健康な食生活がなければ生活していかれないと考えています。その点で、アパートのあるこの町は豊かな食生活を送れる気がしていて。なにより、港町っていうのがいいよね。わたしは港町で産まれ、港町で育ち、これからも港町で生きていきます。

 

 

山形県は名前のとおり(なのかは知りませんが)、360°山々に囲まれています。見渡す限り山、山脈、山、山脈。そして、わたしは海に面した町に暮らしていたので、ギュッとすると『おいでよ どうぶつの森』の村の景観になるようなイメージです。

 

日本海側の空は低く、夏であれ冬であれ鬱屈としています。日本海も青が濃くて、濃すぎて暗くて、波風で荒れていて。そして、山。山。山。山。山。

幼い頃のわたしは本気で「一生ここから出ていかれない」と思っていました。おいでよ どうぶつの森 のように、誰も来てくれない、どこへも行かれない。暗くて狭い町に閉じ込められっぱなしで、ゲームの中でさえ思い通りにならないし…。この町の大人たちのように、退屈に歳をとって退屈な大人として生きるのかな?と落ち込んでいました。(幼い頃のわたしには、身の回りの大人が退屈そうに見えて。人生に何の楽しみもないように見えて。仕方がありませんでした。)

 

初めて横浜に行ったとき、空の青さと空の高さ、海の広さと海の青さ 鮮やかさに驚かされました。それ以来、太平洋の虜で。

東京の空は狭いって言ったのは誰?浮間なんて豊かで長閑じゃん…などと思いながら、生活感の溢れる地区を散歩するのが好きです。赤羽とか板橋とか、浅草。住みたいとは思わないのだけれど…

 

 

お城のあるこの町は、太平洋側の町。雪も降らないし、交通アクセスが(いままで暮らしていた地区より)すばらしすぎるし、山形と比べると生活しやすいとくべつな田舎って感じ。

 

 

あーあ。わたしは江國香織さんの小説の女の子にはなれないなあ。

でも、もうなれなくてもいいかな。

小旅行のあとに、アパートのあるあの町へ帰った時の安心感。自分のベッドで寝るのが楽しみで。

 

新幹線の中では行きも帰りも はやくあの町に帰りたいなあ、なんて考えちゃう。しばらく、これ以上の幸福を見つけられそうにないんです。